Big Mountain 問題について
アメリカ合衆国、アリゾナ州、ユタ州、コロラド州、ニューメキシコ州にまたがるフォーコーナーズ地域に、ディネ(英語名をナバホ)と呼ばれる人々が住んでいます。ディネは、コロンブス以前からこの大陸に住むアメリカ先住民で、人口16万5千人、面 積6万平方キロのアメリカ最大のインディアン居留地を構成しています。
この広大なナバホ・ネイションの中でも、ビッグマウンテンは、アリゾナ東北部に位 置しています。ここは、ディネとホピの人々の住む地で、癒しと調和の聖地、また祖先の霊のおられるところとして、先祖代々、崇められてきました。
伝統的なディネの人々にとって、大地は母なるもの、いのちの中心、祈りの中心です。人々は、大地に供え物をし、祈りの義務を果 たし続けてきました。ディネの人々は、赤ん坊が生まれると、そのへその緒を土の中に埋めます。それは、母胎とへその緒でつながっているのと同じように、私たちは、大地と、「アーッツェー」(ディネ語でへその緒の意味)でつながっているという、古くからの教えによります。そのつながりは、決して、切ったり断ったりできるものでは、ありません。私たちは大地の一部なのです。
ビッグマウンテン地域に住む人々は、ディネの中でも特に伝統的な暮らしを守る人々で、今でも電気も水道もない暮らしをし、羊を飼い、聖地へのお供え物を欠かすことなく続けています。そんな人々に、強制移住の脅威が訪れたのは、1920年代、この地に大量 の石炭資源が発見されたことに遡ります。これに目を付けた鉱山企業は、合衆国政府と結託し、部族政府を巧みに操って、1950年代、石炭の採掘を開始しました。家畜の頭数制限、建造物の新築、増築、修理などが、一切禁止され、ついに1974年、公法PL93-531が議会を通 過しました。この法律は、この地を無住地帯とすることを目的として制定されたもので、別 名「強制移住法」と呼ばれています。これにより、約1万人のディネと数百人のホピが、1986年までに、祖先から受け継いだ土地を移住することを余儀なくされました。
伝統的なディネとホピの人々にとって、ビッグマウンテンは聖なる地。特に、石炭採掘の地ブラック・メサは、女性の山と呼ばれ、生命の創造を司る精霊の宿る処とされています。そこを石炭採掘のために破壊するとは、人々にとって許しがたいことでした。
「石炭採掘地、ブラック・メサは、居留地にある女性の山です。私たちの母なる大地は、裂かれ、開かれ、彼女の心臓が、肝臓が、つかみ出されています。ディネの教えによれば、石炭は、大地でも特に重要な層で、人間の体に例えれば、腎臓のようなものです。ちょうど腎臓が人間の体液を浄化するように、石炭は、水や全ての液体を浄化しているのです。石炭がこの大地のバランスをとっているのに、それに置き換わるものは何もないのです。」(ディネ・アクティビスト バヒ・キャダニーさん)
そうして、大地を守り、それを子孫に伝え継いでゆく、ディネの人々の闘いが始まりました。人々の抵抗にもかかわらず、石炭採掘の鉱区は、日々面 積を広げ、石炭輸送のため大量の地下水が汲み上げられて、人々の生活を脅かしています。また、BIA(合衆国インディアン局)は、人々の家畜を没収し、生活そのものを破壊しようとしています。
20世紀最大のインディアン強制移住問題といわれ、世界の注目を浴びた、聖地ビッグマウンテンの闘いは、移住期限から13年たった現在でも続いています。
「私はビッグマウンテンの住人です。家族も親戚もここに住んでいます。ここが大好きです。、ここは電気も水道もなく、私たちは羊や牛を飼って暮らしています。ここは私たちの聖地です。老女たちが、グレイト・スピリットに供え物をしているところです。私はここを動きたくありません。」(ディネ織り手 ジョアラ・アシキさん)(石川ズニ記)
1997年、ついに、BIAの役人たちと非インディアンからなる弁護士により今まで強制移住を拒んでいた住民たちは、連邦裁判所による調停合意書の借地権書類に強制的にサインをさせられました。そして、昨年(98年)の夏、米国内務省と司法省は、ナバホの警察を使い、抵抗していた住民たちに西暦2000年の2月1日までに最終的な立ち退きを完了せよとの通告を出しました。
昨年の夏、私たちは、ビッグマウンテンエリアの中心部、聖なる泉をたたえた『ハート・オブ・ビッグマウンテン』をバヒ・キャダニーさんの案内で訪れました。そこは、何万年も変わることのない原初の姿、まったく手つかずの自然の姿を保っており、またそこに住む人たちもまた北米最後の本当のインディアンであるとバヒは言います。彼らの伝統と文化、そしてその聖地が、牛肉の畜産地、レクレーションエリア、そして石炭、鉱物坑へと変わってゆこうとしています。
バヒはこう最後に言いました。
「ビッグマウンテンをサポートして下さい。それは、なにも我々そこに住む少数の住人だけのためではなく、世界中の生命と大地すべてのために。なぜなら我々は聖地であるフォーコーナーズの中心、ビッグマウンテンを世話するように創造主よりそこに置かれた大地の守り人であり、もし我々がそこから消えてなくなるということは、この地球全てのバランスが狂い、全世界にその影響が及ぶことになるからです。だからビッグマウンテンを守ることは、あなた方すべてを守るということなのです。」
ビッグマウンテンに注目してください。今この時代に一体何が行われようとしているのかを。
Hozho go Nan Naazo. Hozho go Nan Naazo.
MAY WE WALK IN BEAUTY.
私たちが調和のとれた美しい道を歩いてゆけますように (ディネのお祈りの言葉)
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