2007年9月5日更新

2007年夏、ビッグマウンテンレポート

車から降りて、その懐かしい乾いた大地に立つと、どこからともなく薫るフレッシュなセイジの匂い。
身を浄めるロッジのための、聖なる火が焚かれる場所ではジュニパー・シーダーの甘い香りに思わず!笑いながら泣きたくなる。
そして、そのサークルに立つ色彩りどりの祈りの旗で飾られた木に会いに行くと・・予想通り泣いてしまった(笑)。

4年ぶりに来れたビッグマウンテンの、その聖なる場所を守るため始められ、今年でもう四半世紀となる儀式サンダンス。
何も変わってない。何も変わらない。そこに輪があり、火が焚かれ、浄め、祈り、歌い、泣いて、笑って、たたえ合い、この道の確かさを確認し、忘れていたものを思い出し、出会えた喜び、再会の喜び、共に祈り合う素晴らしい時を喜び、共に祈り合えたことに感謝する。美しさに囲まれ、美しさに喜び、美しさに泣いて、美しさとひとつになる。見えない世界も、目に映るたくさんの美しいものも、共に、いま、ここにあることに歓喜する・・・。

すっかり忘れてたな~(苦笑)。

すこしやっぱり年とったけれど、変わらず力強い、このサンダンスの支柱であるチーフ ”アンクル” クロードッグも、元気に明るくなったノーマンも、去年からチーフになったアルビーノも、2年振りのバッキーも、そして亡きアーチー・ファイヤー・レイム・ディアの息子のジョン・ファイヤーも、モホークのボブも、名前忘れたけどよく見るアパッチのおじさんも・・・みんな立派なイーグル・フェザーのヘッドドレスつけてそこにいた。こんなに大勢チーフたちが来たこのサンダンスはいままでも記憶にないな。そう、今年はビッグマウンテンの抵抗運動が始まってから30 年目にあたる年でもある。

そのことは地元バヒからメールで聞かされてたけれど、久しぶりに訪れたサンダンスの輪の中で、ロッジの中で、それぞれキャンプの火の周りで、かつてのレジスタンスの闘いや、夢や希望が思い出話だけではなく、いまも進行形の話として、久しぶりに還ってきた! 

本当に、こんな感じはいつ以来だろう。明るくて笑いに満ちて、力強い、スピリットあふれる日々よ! いまは亡き日橋さんのあの笑顔。島貫潤二上人がご祈念されていた時代。大勢の地元エルダーたちが、サークルで、アーバーで共に踊り祈った日々。そう、かつてのサバイバル・キャンプで夢見たディネ独立国の夢や希望、大いなるビジョンが甦ったのだ。

’96年を最後にサンダンスでさえもリロケーションされた、と噂され、永年支援し祈りを託したエルダーたちのその多くは翌年からのここ新しいサンダンスの場所に来ることはなくなった。そのエルダーたちが支援していたもう一つのビッグマウンテン・サンダンス、HPL内となったアナ・メイ・キャンプのサンダンスも2001年儀式直後の強制執行で徹底的に破壊されたのを最後に、いまはもう行われていない。


永い闘争の歴史がもたらす影の部分。地元の対立。サンダンスの時でさえいろいろネガティブなエネルギーが渦巻いて、聖なる場所と聖なる道を守る、その本来の目的であったサンダンスのビジョンが語られなくなり、忘れ去られていくような、そんな夏を重ねてきてはいたけれど・・。

しかし、いくつもの冬を越え、巡る季節のなかに春がくるように、そのスピリットの火はけっして消えてはいなかった。エルダーたちの夢は死なない。かつてのヤング・ウォリアーたちがいまは少しづつ髪も白くなり、しわを顔に刻み、その受け継いだスピリットをあらためて語り始めた時、聖なる火の周りでは、久しく見ることのなかった次の世代、地元ヤング・ウォリアーたちがせっせと汗を流し働いて、またロッジの中でも祈りの汗を流していた。

聖なるビジョンが未来を導く。なんて美しい光景だろう!

いのちの木はまた今年も立てられ、来年までこの地を守る。このサンダンス含めて春、夏、秋、冬、祈りのパイプは儀式のなか地元エルダーたちと共に回される。

新しい歌もたくさん増えていた。子供たちも輪の中で踊っている。シーダーの煙は絶やされず、この地を浄め続ける。

問題はもちろんまだまだたくさんあるし、心配事もあるけれど、一つの大きな懸案事項だった地下水のくみ上げは中止された、と地元ディネの活動家から笑顔で聞いた。 少しづつ雨も帰ってきてるのかな? いつもの年よりもセイジが青く繁っている。 ヒツジが草を食み、きれいな花もたくさん咲いていた。

Walk in beauty !



Walk in beauty Project
山口晴康

 

追記:
今年で30年を迎えるビッグマウンテンの抵抗運動を祈念して、秋にギャザリングが行われます。地元のエルダーたちも大層喜び心待ちにしていると、それをオーガナイズしている地元ディネのバヒ・キャダニー氏から報告が入っていますが、その実現に向けてサポート記念Tシャツやポスター等の制作を考えているようです。シンプルな集いとなるようですが、そのための支援のお願いも届いています。こころばかりのお願いをさせていただきたいのですが、その一環として 2000年に行いましたビッグマウンテン支援ウォーク"The Long Walk for Big Mountain"の記録映像 DVD「ビッグマウンテンの道」の購入も改めてお願いする次第です。飛騨高山から東京までのウォークの記録映像に加え、現地に駆けつけてくれたドキュメンタリー映画の第一人者、大重潤一郎監督が撮影・編集した作品です。音楽は共に歩いた、天空オーケストラ岡野弘幹、内田ボブ、ダダ・チャイルド。そしてナレーションは亡くなられる直前に引き受けていただいた、山尾三省さんがつけてくださいました。定価は 2800円(税込み)ですが、その売り上げの30%(840円)をビッグマウンテンへの支援に使わせていただきます。