―叩き潰された信仰―

聖なる儀式の場、サンダンスグラウンドをブルドーザーで破壊し、
精神世界を混乱に陥れたホピ部族政府


ナバホ・タイムズ、2001年8月23日、マーレイ・シバラ (翻訳 石川ズニ)



  サンダンス・アーバーの柱はチェーンソウで
  切られ、すべてひき抜かれた。

もし、アメリカ南部黒人バプティスト協会が、焼き討ちにされたなら、ニュース・メディア始め、合衆国大統領、議会、及び一般大衆は黙っちゃいないだろう。

しかし、ジョン・ファンメイカーは次のように語る。
「この事件は、ネイティブ・アメリカンの宗教が踏みにじられても、この国では宗教迫害にも、人権侵害の対象にもならない、というとをあからさまに物語っている。」

彼は、アンナ・メイ・キャンプのサンダンスのリーダー、ジョー・チェイシングホースの補佐役の一人でもある。今年も各地から集った100人以上のサンダンサーと共に祈りを捧げた。

そのサンダンス・グラウンドが8月17日、ホピ部族政府の手によって破壊された事件について、彼はナバホ・タイムズの取材に応じてくれた。
 
サンダンスは浄化のための期間も入れて8日間に渡って行われる。4日間の儀式の間、サンダンサーは断食を続け、7月の熱い太陽の元で、生命の樹を中心に踊りつづける。生命の樹には祈りを込めたタバコタイが捧げられる。毎朝、毎夕スウェット・ロッジで身を清め、肉体の一部をピアスしてグレイト・スピリットに捧げる。

「ネイティブ・アメリカンの宗教の自由は、アメリカ憲法、及びアメリカ・インディアン宗教的自由法で守られていると思っていた。しかし、我々は今日なお、我々の信仰を守るため、祈りを続けるために闘わねばならないのだ。」

ホピ部族政府のスポークス・ウーマン、クライレ・ヘイウッド(イギリス出身の黒人女性)は、8月17日、次のように語った。

「この土地をめぐるホピ部族政府の管轄権を明らかにする最終手段として、部族政府は、アンナ・メイ・キャンプとして知られているサンダンス、その他非合法な集会が行われる場所を解体する行動をとった。」

「ホピ・レンジャー、BIA警察、ナバホ・カウンティー警察(州警察)、ホピ部族政府職員が迅速かつ静寂のうちに、サンダンス・ツリーを含むアンナ・メイ・キャンプの建造物を取り除き、それらをトレイラーに積み込んで運び出した。そしてこの地域では、いかなる公的集会も許されないことを通告した看板が立てられた。

ヘイウッド女史は、サンダンス・ツリーをウッド・チッパーを使って切れ切れに裂いたのかという質問を断固として否定した。

「ウッド・チッパ―を目撃したという者は、きっとペヨーテでも摂っていたんじゃないかしら。」
彼女は付け加えた。

サンダンス・ツリーは何片かに刻まれ没収された。どこに運ばれたのかは、ヘイウッド女史にもわからないという。ヘイウッド女史によると、アイリーン・ハミルトンとエリック・クリテンドンが、ホピの土地に不法に侵入したかどで逮捕された。

アイリーン・ハミルトンは、2000年4月、ホピ部族政府の許可なしにホピ管轄地への立ち入りを禁じられる判決を受けた。彼女はビッグマウンテンで強制移住に抵抗する家族をサポートする活動を長年にわたっている。 

事件当時、彼女はアンナ・メイ・キャンプの周辺にいた。というのも、彼女は最近この土地に住む、抵抗者であるレオナルド・ベナーリと結婚したからだ。

クリテンドンは、やはり抵抗者の一人であるルイ―ズ・ベナ―リを母親とする。彼はサンダンス・グラウンドの隣のホーガンに住んでいる。エリック・クリテンドンの第一回公判は、9月10日に予定されている。
 
ナバホ・タイムズは、ホピ部族裁判所の検察官であるゲオフ・ティガー氏に電話で連絡をとった。彼は留守で、留守電にハミルトン・ベナ―リの法的立場についての質問を残した。しかし締め切りの水曜日になっても、彼からはなんの連絡もない。

15年前、ラコタ族の長老たちは、ビッグマウンテンで強制移住に直面したナバホの家族たちを、祈りという手段で支援しようと、アリス・ベナ―リ、ジョン・ベナ―リ(2人とも今は亡き人)にサンダンス・パイプを渡し、彼らの祖先から受け継いだ土地で、ラコタ族の儀式であるサンダンスを始めた。

ベナ―リ家でのサンダンスは、ナバホの土地で行われた最初のサンダンスのひとつでもある。アンナ・メエ・キャンプという呼称は、ネイティブ・アメリカンの人権獲得闘争の女性闘士、アンナ・メエ・ピクトゥ・アクワッシュを称えて名付けられた。ピクトゥ・アクワッシュは、カナダのミックマック・インディアンで、母であり妻であり、社会福祉家であり、教師であり、そしてまたアメリカン・インディアン・ムーブメント(AIM)の女性闘士でもあった。

アンナ・メイ・ピクトゥ・アクワッシュは、30歳の若さにして命をなくした。彼女の死体は、1976年2月24日、サウスダコタ州、パインリッジ・インディアン居留地の峡谷で発見された。FBI は身元確認のため、彼女の両手を切断してワシントンに送った。彼女の死因は凍死として片付けられた。

その後家族がAIMと接触し、死体を発掘し、再度検死を行った。その結果、死因は後頭部を銃で撃たれためであることが判明した。

誰がピクトゥ・アクワッシを殺したのかはいまだに謎である。

ジム・ファンメイカーは、1980年始めに、ビッグマウンテンのサンダンスに招待された。それ以来15年間に渡り、「平和的な方法」で強制移住に直面した家族を支援してきた。

「生命の樹を切り倒すということは、我々の創造主の手足を切り落とすのと同じ事だ。サンダンス・ツリーはいのちを表す。我々の創造主なのだ。」

ファンメイカーはゆっくりと、やわらかな響きで話し続ける。
「サンダンス・ツリーは生命の樹と呼ばれている。予言によれば、サンダンスの儀式がアリゾナで行われたのは、ナバホのためではなく、ホピのためといわれている。

生命の樹がこの土地にやって来たということは、予言が果たされたことでもある。それは第5世界がきらびやかな世界であることの象徴でもある。南西部の生命の樹はコットン・ウッド、その葉は心臓の形をしていて、風に吹かれてきらきら輝く。」「予言によれば、もしホピが彼らを助けるための儀式であるサンダンススを尊
重しないようなことがあれば、ホピは部族としての方向性を失うだろうと言われている。

この土地でサンダンスを行うことで、実際ナバホはホピを助けていることになるのだ。これはとても重要なことなのだ。なぜなら、予言によると、もしホピが死んでしまったなら、精神世界及び環境的な因果が生じるだろうと言われているからだ。」

また、彼は次のようにも付け加えた。
「アンナ・メイ・サンダンス・グラウンドを破壊したホピは、伝統的な生き方を守るホピとはまったく違った人たちだろう。」
 
「ネイティブ・アメリカン社会の中にも心の病が蔓延している。それはまずヨーロッパに広まり、人間が母なる大地を攻撃するように仕向けた。

それは「欲望」と呼ばれる。この大陸中のネィティブの土地で行われている地下資源開発がそれを物語っている。それと同じ類いの欲望が、ここビッグマウンテンでは石炭開発をめぐって繰り広げられているのだ。ホピ部族政府、ナバホ部族政府による石炭採掘権の争いが、この地の土地争いを作り上げた。

ディネはこの土地に何千年もの間暮らしつづけてきた。石炭のために土地を投げ捨てることなど出来ない。」
 
「サンダンスの儀式は生命の再生をも意味する。グレイトスピリットに感謝し、肉体の一部を捧げ、自分自身を犠牲にすることで、母なる大地を助け、守るように、全てのいのちが生き残れるように祈る。」

ジム・ファンメイカーは強調する。
「過去500年、ネイティブ・アメリカンの間には、母なる大地が地下資源の開発などで傷つけられると、大きな自然の災害が頻発するという予言が伝わっている。それが今世界中で起こっているのだ。」 

―抗議の宛先リスト―

  • ホピ部族政府議長、及び部族議長の補佐役
    Wayne Taylor Jr., Chairman& Eugene Kaye, Chairman's Chief of Staff
    The Hopi Tribe
    P.O.Box 123
    Kykotsumovi, AZ 86039
    Tel:520-734-2441(x101 Wayne Taylor)(x107 Eugene Kaye)

  • ホピ部族裁判所、裁判官(今回の事件の担当裁判官)
    Honorable Judge Delfred Leslie
    Hopi Tribal Council Court
    Highway 264
    Milepost 398.6
    Keams Canyon, AZ 86034
    Tel:520-738-2233

  • 合衆国インディアン局(BIA)関係
    BIA Hopi Agent Fred Chavez
    P.O.Box 158
    Keams Canyon, AZ 86034
    Tel:520-738-2225 ext 223 or 520-738-2249
    Fax:520-738-5187

  • Wendell Honani, Hopi Area BIA Superintendant(Fred's boss)
    P.O.Box 158
    Keams Canyon, AZ 86034
    Tel:520-738-2225 or 520-738-2249

  • Mr.Neal McCaleb, Assistant Secretary
    Department of the Interior for the US Bureau of Indian Affairs
    1849 C Street NW Mail Stop 4140
    Washington,DC 20240
    Tel:202-208-7163
    Fax:202-208-6334

  • Wayne Nordwall
    Regional Director, Phoenix Regional Office of the BIA
    P.O.Box 10
    Phoenix, AZ 85001
    Tel:602-379-6600
    Fax:602-379-3886/602-379-4413
    Email: WayneNordwall@bia.gov

  • Thomas F. "Tom" Davis, Land & Water Resources Range Conservationist
    U.S. Department of the Interior, Bureau of Indian Affairs
    Western Regional Office
    400 North 5th Street
    Phoenix, AZ 85004
    Tel: 602-379-6600 or 379-4511
    http://phxao.az.bia.gov/map.html

  • アメリカ合衆国上院議員
    Gale Norton
    U.S. Department of the Interior
    1849 C. Street N.W.
    Washington, D.C. 20240
    Tel: 202-208-3100
    Email: gale_norton@ios.doi.gov
    http://www.doi.gov/secretary/

  • アメリカ合衆国大統領
    President George Bush & Vice President Dick Cheney
    The White House
    Washington, D.C. 20500
    Tel :202-456-1111
    Fax: 202-456-2461


    なお、今回の事件では、ナバホ・ネーション大統領ケルシー・べガイ氏は、HPLの住民にとても同情的で、数々の面でのサポートを申し出ています。これは強制移住問題が持ちあがって以来、初めてのことといいます。ケルシー・べガイ氏には、今後もHPL住民のサポートを続けるように、手紙を書いて下さい。

  • ナバホ・ネーション大統領
    Kelsey Begaye, President,
    The Navajo Nation
    P.O.Box 9000
    Window Rock, AZ 86515
    Tel: 520-871-6000
    Fax: 520-871-635



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