1977年オリジナルディネ・レジスタンスの復活
ビッグマウンテン・スプリング・サバイバルギャザリング

文:バヒ・キャダニー
訳:大羽正律

(注:これは緊急の報告として書かれたもので、具体的な土地問題に関する報告はありません - バヒ)

UAP発 - 2004年5月25日北アリゾナ、高地にある砂漠のメサは、いつもと特に変わることのない春の気候だった。夜は澄み渡り、日中は陽が差し暖かった。夜明け前の薄暗がりで儀式の火をともすとき、大気は冷え込んでいた。「ブラックメサを救えウォーク2000」以来消えていたかまどに、サバイバルギャザリングが行われる四日間の間燃え続ける火が入れられた。火が大きくなるにしたがい、祈りの歌と共にドラムの音が鳴り出した。色とりどりの布で作られたタバコタイがくくりつけられた杭によって囲まれた円の中に参加者たちが入って行く。祈りの歌に唱和しながら、人々は一列になって東の入り口から入り円陣を組んでいく。

周りの木々にいる小鳥たちはドラムの音が止まっても歌い続けている。参加者は一人づつ祈りの言葉とともにシダー(杉)の葉を火にくべていく。全員がそれを終わる頃には、スィンロックメサの地に陽が差し始め、この土地に住んでいた先祖たちの偉大な業績が紹介された。ここにはさまざまな歴史が刻まれている。言い伝えられた物語、聖なる丘の上の社、神聖な泉、大昔のホーガン(住居)跡、植民侵略者たちからの避難所、そして故ロベルタ・ブラックゴートの住居。

この最初の夜明けの集いで、何の目的で集まったのかが確認された。それは長老たちの長寿と、ブラックメサ/祭壇を救うという伝統的な教えと、その教えを伝える人々を祝うものであった。また参加者たちは、来るべき新たな事態の展開と状況について知らされ、伝統に従がい強制移住と抹殺に抵抗する長老たちのために祈り、彼らを支援し続ける必要があることが伝えられた。「気をつけてください。我々が集ったり、自由な人間であろうとすることを妨げようとする力が動き出すでしょうから...」と、ディネのコーディネーターは言った。

ギャザリングの主な議題は人々のネットワーキングと、先住民の考え方や生きるべき道のリバイバルに関する事だった。しかし広報に努力が払われたのにもかかわらず、ギャザリング初日の集まりはどちらかというとささやかなもので、ディネよりもインディアン以外の人々が多く参加した。それでも、大事なのはこのギャザリングを実現させ、先住民族の真の戦士たちを祝うことだった。

参加者のそれぞれは何をすべきかを心得ていて、いちいち何を手伝ったらよいか尋く必要がないようだった。動物の世話をする人たちは羊やヤギを柵の外に出し、薪の係は木を切り始める。水を汲みに行く人たちもいれば、ロベルタの家のキッチンの脇の日よけの下では数人が作業をしている。大きなパラシュートを張って新たな日よけを作っている人たちもいる。サポーターの何人かはお年よりの人たちを訪ね、彼等がギャザリングに参加する時間がとれるように、何か手伝う事があるかを聞いて回った。すべてが、瞬時に起こったネットワーキングのようだった。全員がここブラックメサの片隅で何がなされるべきかを知っていた。

その中で、唯一誤った命令に従っている人たちは、ホピの部族政府の警察官とFBIの捜査官たちだった。ギャザリングの最初の三日間、これら関係当局の人間は、参加者たちの人としての基本的な自由を侵害しようとした。彼らは企業の欲望のために書かれた形だけの命令書を自分たちの権威のよりどころにし、それを遂行しようとしていた。合衆国アリゾナ地方裁判所とその法令によれば、参加者やコーディネーターたちは「ホピの土地」に不法侵入している、と言うのだ。しかし彼らは、個人が「ホピの土地」に入ることができるかどうかという法律を、ホピの名の下に合衆国の司法システムがなぜわざわざ作ったか、ということは説明できなかった。関係当局は一帯の住民やそこへの訪問者たちを、完全にばかにして脅迫した。ギャザリングの三日目にポーリーン・ホワイトシンガーはFBIの捜査官に向かって言った。

→ FBI から質問を受けている様子(映像)

「私たちは伝統的なホピの人たちと話をした。彼らは、『自分たちはこの土地をホピ・ネーションの土地だなどと宣言したことなどはない。』と言っている。特別な目的のために彼らはブラックメサの土地を使用するだけで、それによって他の部族を追い出すということにはならない、と言っている。だから『ここはホピの土地だ』などと、私たちに向かって言わないで欲しい。あなたたちは嘘をつくためにここにいる。帰りなさい。あなたたちを招待してはいないのだから。」

ギャザリングに来た長老たちの何人かは、強制移住政策を通して執行されてきた民族の抹殺に対するレジスタンスが目的だ、と繰り返して述べた。強制移住に対するレジスタンスとは、すなわちピーボディー炭鉱会社(Peabody Coal)の採掘をやめさせ、ブラックメサの水を使用するのをやめさせることだ。また長老たちはレジスタンスとは、先祖や強制移住された人たちの住居や土地を守ることでもある、と言った。土地に対して、またその未来についての実際のポリシーを作っていくのは長老たちだ、といったことをディネのコーディネーターが話していたことに応えて、キャサリーン・スミスは言った。
「あなたたち若い人たちも、この困難の中でいかに育てられたかということを拠りどころにして、これから生きて行かなければならない、ということがじきに分かるでしょう。土地に対するポリシーと礼拝の仕方を引き継いでいかなければなりません。私たち年よりは微力ながら控えているだけだから、これからの私たちの国の未来はあなたたちすべてにかかっているのです。」

参加したディネの何人かは、祖先の土地で集うことを禁止する州法には屈服しないことが大前提だと信じていた。人々は今後のギャザリングの場所は抵抗している人たちの住んでいる所か、その近くで行うことで同意した。長老たちは口をそろえて、故ロベルタ・ブラックゴートの土地で、再びギャザリングを開くべきだと言った。彼らや彼女たち長老にとっては、当局による脅しはなんの妨げにもならないのだ。「ここでまたギャザリングをして何がいけないんだい。」と、長老の一人は言った。

ここで抵抗する人々はありとあらゆるさまざまな脅迫の中で日々を暮らしている。新しい材木や飼っている動物の数に関して追求される。家畜は放牧地で数えられ、彼等の土地に何か変化があると写真が撮られ、畑に種をまいているところを監視される。ホピ部族政府のレンジャーたちは「禁止条項のリスト」を掲げて、尋問したり脅したりする。ここの女性の長老たちは筋金入りのハードコアレジスタンスたちで、故ロベルタ・ブラックゴートがその良い例だった。彼女たちは自分たちの土地が分割されたとき以来、政府との間で何の書類にもサインしていない。彼女たちは今でもグレートマウンテンの精霊であるベットゴチデとの絶対的な契約を堅く信じている。

今回のギャザリングの成果は四日間の朝と夜のスエットロッジの儀式以外に、「選ばれた」外部からの支援者たち同士、またディネの長老や若者たちとの団結だった。ネットワークを拡げていくための具体的な計画が決められることはなかったが、ロベルタ・ブラックゴートのスピリットがこのギャザリングをそのように導いたのだろう。それは警察国家に耐え、それについて学ぶためのものだった。これまで、いろいろなところで活動家たちはガンジーやマーチン・ルサー・キングまたは他の自由のための戦士たちの思想を受け継いできた。しかし、このスプリング・サバイバル・ギャザリング2004年で、新たな道が創りだされた。「私の母の足跡がこの一帯の丘や谷やあらゆるところにまだ残っています。」朝の祈りのサークルでダニー・ブラックゴートは言った。「すべての生き物、翼のあるもの、地を這うもの、四つ足のもの、水に住むもの、そして二足の生きもののために、この大地を救う戦いの中で彼女が残したものを、やり遂げるかどうかは我々すべてにかかっています。母はタートルアイランド(亀の島:北米大陸のこと)のあちこちに出向いては、その戦いを訴えました。彼女は自分の声がほとんど出なくなるまでそれを続けたのです。」

主権という単語は単に耳ざわりの良い用語にすぎないかもしれない。しかしそれが実際にここでディネやそのゲストたちによって実践されると、よりすばらしい意味を持ってくる。当局側にとって「無断居住」の嫌疑がある非インディアンのサポーターたちは、故ロベルタ・ブラックゴートの住居地を整えることをやり続けていた。裏の畑は耕され、種を植えるばかりになっていた。小さなコーン畑には鋤が入れられ、もう少し植えられるようになっている。薪はくくられて高く積み上げられ、水の容器はどれも満杯だった。スエットロッジのための石と薪さえすでにロッジ脇に用意されていた。羊やヤギ、それを監視する犬はふだんと同じように扱われていた。参加したサポーターやゲストたちそれぞれの信仰や政治的見解は異なっていても、全員が作ったサークルは大きな力強い輪になった。先住民たちはこれをレッドピープルの聖なる輪と呼んでいる。こういったサークルによる現象は多くの文化や、ヨーロッパの文化にさえ見られることで、それはまた主権の問題にも関ってくる。

大地のスピリットたちがその子供たちに地球のために立ち上がり戦うように語りかけている一方、当局側は翌日またギャザリングの場に最終警告を与えに戻ってきた。ゲストとケアテーカーたちはブラックゴートとゴーイの所有する羊やヤギを分けるように言われた。さらに、ロベルタ・ブラックゴートのホーガンと石造りの家を明け渡し、個人の所有物をすべて持ち出すようにと言われた。まもなく合衆国インディアン局の民族抹殺指令によってこの居住区全体がブルトーザーでならされるだろう。この法律も、これまでもずっとやってきたように、侵略と略奪のためにでっちあげられた大企業のための法律のひとつである。この戦いは、見たところまだ終わってはいず、これからが新たな始まりになるのかもしれない。最初のオリジナルレジスタンスの火が再び燃え上がっているといえる。先祖のスピリットたちは、未来がいかにあるべきかについて若い人たちを試しているのだ。克服しなければならない、より大きな問題が横たわっている。多くのディネも一般の米国社会の人々も「ビッグマウンテン」をあきらめてしまった。世の中の人々は電力を要求し車も乗りつづけたいと願っている。メイジャーのメディアでは、ディネのレジスタンスについて触れることもなくなった。ハードコアレジスタンスの長老たちの力は生きのびるだろうか?

c2004 UAP(Unpopular Activist Page) Written by Bahe Katenay, Dineh