―ビッグマウンテン・サンダンス2001リポ−ト―

アナ・メイ キャンプ、サンダンスグラウンドが破壊された!
8月17日(現地日時)早朝5時半ごろ、ビッグマウンテン地域、旧ナバホ・ホピ共同使用区で現在はホピ分割地(HPL)に編入されているアナ・メイ・キャンプのサンダンスグラウンドが破壊され2人が逮捕されました。

ブルドーザーの痛々しい痕跡を残すサンダンス・グラウンド


[以下、現地にいるレポーター石川ズニさんより来たメール]

取り急ぎお伝えします。8月17日、早朝5時半、ホピ部族警察、BIA、ナバホ・カウンティー警察(ナバホ部族警察とは異なる)により、アナメ・キャンプ・サンダンスグラウンド(ルイーズ・べナリーさんの住居)、及びスウェットロッジが破壊されました。約15台を越えるパトカー、家畜没収用のトレイラーなどがなんの予告もなく現われ、チェーン・ソウでサンダンス・ツリーを切り倒し、ブルドーザーでサンダンス・グラウンド、及びスウェット・ロッジをことごとく破壊していきました。約60人がその作業に携わったと聞きます。
当日、主のルイーズ・べナリーさんは、仕事でフラッグスタッフに居り、留守を守っていたのは、長男のエリック・クリテンドン(18歳)。当局の破壊行為を写真に記録中、不法侵入の罪で逮捕されました。また後から駆け付けたアイリーン・ハミルトンさんも、当局の行いに抗議したため逮捕されました。エリックは、300ドルの保釈金を支払い、6時間後釈放されました。またアイリーンさんは、裁判管轄権が異なる、という理由で5時間後、チューバ・シティーまで送られ、路上で解放されました。
エリックの裁判は現在進行中で(第2回公判が9月10日にあったばかり)、次の公判(11月6日)から本格的な論議に入ります。エリックの所有していたカメラは、当局に没収されました。
私は当日の午前中、ビッグマウンテンの友人から電話があり、急いで現場に駆け付け、しばらくアナメ・キャンプで監視をかねて滞在していましたが、ホピ部族政府によるサポーターの追い出しが始まったため、再び自宅へ戻っています。
アナメ・キャンプではその日のうちに、ナバホのメディスンマンが呼ばれ、夜通しプロテクションのためのセレモニーが行われました。また破壊されたスウェット・ロッジに火を点すセレモニーも行われました。
ホピ部族政府の許可を得ないで行われたサンダンス(アコモデーション・アグリーメントによると、HPL地域に住む住人が宗教的な儀式を行う場合は、ホピ部族政府の許可を得なければならないことになっている。しかし、許可が出ないことが少なくない。1999年、アナメ・キャンプのサンダンスに当局が許可を与えなかったことについては、昨年の人間家族10月号を参照。今年は、許可を得ないで行うという決定がなされ、7月8日から1週間にわたってセレモニーが行われた。そのためツリー・ディ(生命の樹を運び込む日)にルイーズ・べナリーはじめ、長老ルース・べナーリ、長老ポーリン・ホワイトシンガー、エルビナ・ホースハーダー、ジョアラ・アシキの5人のナバホ女性が逮捕された。)に関する裁判は始まったばかり。その矢先の出来事でした。
破壊の当日ルイーズ・べナリーさんは仕事先から自宅に駆け付けて一言こう語りました。
「次はホーガンが狙われる。」
今回の当局の強行策は、アコモデーション・アグリーメントのノン・サイナーを震撼させています。今後ホピ部族政府議長であるウェイン・テイラーを訴える訴訟を提起しようという動きもあります。

石川ズニ


アーバーの柱の一部がサンダンス・グラウンドに放置された。(その他は証拠物件として押収された)

スウェットロッジもことごとく破壊された、
タバコ・タイなど無残に積み上げられ残された

サンダンス・グラウンド跡に散らばる聖なるタバコ・タイ

生命の樹、サンダンス・ツリーはここに立てられていた

その前兆として今年7月11日、翌日より始まるサンダンスのためのツリーセレモニーの日、サンダンスグラウンドの中心に立てられる聖なる木を運び入れるため、木がアナ・メイキャンプの入口近くに到着したところで道路封鎖をしていたホピ部族警察に止められ、長老2人を含む5人が逮捕されました。

5人は一晩ホピ部族警察の留置場に入れられましたが、翌日釈放されサンダンスの初日に訪れた僕たちの前にその元気な姿を見せてくれました。しかし、 アナ・メイキャンプ内ではセキュリティを始め皆、緊張しており、子供連れの僕たちにも、いつ警察が介入してきて逮捕されるかもしれないので、子供をいつも手元に置いておくようにと指示を受けたりもしました。それは丁度5年前、僕たち日本人の多くが関っているサバイバル・キャンプSDNサンダンスが同じように警察に囲まれ一斉逮捕のうわさが流れるなかサンダンスが行われ、その後サンダンスの木をフェンスの外側、ナバホ分割地(NPL)に移動せざるを得なかった状況を思い起こさせました。(翌年からサンダンス自体をNPLに移り、今に至っている)

が、何故かその時ほど深刻で重いムードにはならなかったことも事実です。それは一つには既に中心の人達が逮捕されてその裁判の日時が決まっていたこと。そしてその中心人物である逮捕されたルイーズ始め、ポウリーン、ルース、そしてロバータ・ブラックゴート達グラン・マ達が強く元気にサンダンスを見守り、共にアーバーの下で踊っている姿を見る事が出来たこと。またサンダンスチーフのジョー・チェイシングホース以下サンダンサー達一人一人の祈りがとても力強く感じたからでした。

そこに立っている木は例年に比べ、特に太く、大きく、まるで力強いエルダーが両手を広げ大地の上にどんと立っているような、ここビッグマウンテンを象徴するかのような今年のツリーです。そして皆の心配をふき飛ばすかのように初日の太陽の回りにまあるい虹もかかりました。

それにしても今年はSDNサンダンスといい、アナ・メイといいツリーデイの日にどちらもトラブルが起きてツリーが立ったのが明け方近くになりました。去年、嵐に見舞われツリーが真2つに折れたことでここのサンダンスが中止されたことも含めて、この祈りの儀式をめぐる目に見えない世界では何が起きているのでしょうか…。

翌日、ここを離れる僕たちに今年はセキュリティチーフのようなコデールが、道路上のフェンスライン毎に、それぞれの分割側にホピとナバホの警察が道路封鎖を行っているという、無線を通じて得た情報が伝えられ、逮捕もしくは何らかのトラブルの可能性があるため、封鎖の解ける夜以降動くようアドバイスを受けましたが、少し考えた後どういう現場状況か、一応確認したいとも思い、あえてその場を通ることにしました。最初のフェンスラインまで来たとき向こう側(NPL)よりこちら側(HPL)に入る車が先に止められて何やら注意とか免許証の提示等を求められているようでしたが(事前の話ではもしアナ・メイキャンプに行くのなら一日につき罰金500ドルが課されると通告された。既に中にいるサンダンサーについても同様と聞いていた。)、HPL側からフェンスを超えて行くときにはNPL側のナバホ警察からは何の制止もされず、ただ通り過ぎることが出来ました。そして次のフェンスラインは、今度はHPLに入ることになるため、ナバホ居留地内を抜ける道に入り事なきを得ました。日本に帰国後、すぐに現地にいる友人からそのことのニュースが入りましたが、それによるとサンダンサーは全員無事(逮捕及び罰金もなかった)で、儀式は何事もなく終了したようですが、BIA(内務省インディアン局)によって唯一の水源であるボーディングスクールの水道が止められていたそうです。


当局の残していった警告

元はといえばHPL側に編入されてからも毎年続けられて来たここアナ・メイサンダンスですが、前述したサバイバルキャンプSDNサンダンスのように強制的に儀式が妨害されることもなく続いてこれたのは一つにはサバイバルキャンプと違い、事前にホピ政府に対してセレモニアルユーズ(儀式のための土地使用)という目的の使用許可を申請してその許可を取って行っていたからでした。それが2000年2月1日最終立退き期限(デッドラインデー)が出された頃と同じ '98年より一切申請するにも関らず許可を出さないという方針に強硬転換されたのでした。それゆえ '99年には許可なしで集会を行うという名目で、その時も部族警察が介入し道路封鎖が行われ、アナ・メイキャンプに向かう人に様々なプレッシャーがかけられましたが逮捕される事態までには及びませんでした。

昨年は前述のようにサンダンスが自主的に中止されたのでそういったトラブルは起きませんでしたが、今年はもちろん事前に幾度も許可申請がホピ政府に出されたのですが一切それには応じられずに、従って無許可でのサンダンスとなったのです。だから事前に何らかのトラブルは予想されていたので、今年は特にSDNサンダンスに来ていた日本人にも続いて行われるアナ・メイサンダンスに来て欲しいと要望がありました。

しかしいまや同時期に他のナバホ居留地内ウィートフィールドで別のサンダンスが行われ、続いてピニオンでも行われるので、どうしても地元のディネを始め他から来る人も分散してしまいます。本来ならばこういう時こそ内部、外部の目をそこに集中することが大きな力となるのでしょうが、永年にわたりあまりにも政治的にも困難な状況に置かれ続けて来たことが、地元の人の心に大きな影を落としています。それは日本でも各地のさまざまなダムや原発立地等の場所に見られる地元の分裂や運動自体の停滞と同様の状況です。
現在ディネの土地で行われている計4つのサンダンスはそのことの象徴とも言えるでしょう。
しかし今回サンダンスの時に長老以下5人が逮捕され儀式に重大な妨害が及ぶことになるとは地元の人たちでさえ予測出来なかったようです。

ましてやその後、主のルイーズやサポーター達の留守を狙ってその権力による力を見せつけるかのように、15台ものパトカーとブルドーザーが侵入し、儀式の場、その全てを徹底的に破壊するなどというのは誰も想像すら出来なかったと思われます。

警察が取り囲むなかアナ・メイサンダンスが行われている最中、フラッグスタッフにバヒ・キャニダーを訪ね、その事について話しをしたなかで、バヒでさえも「いくらホピ政府がそういう妨害をしようが儀式までは中断することは出来ない。なぜならそれがインディアンだからだ。他のインディアン部族が、他のインディアン部族の儀式をいかなる理由があっても強制的につぶすようなことは出来ない。なぜならもしそんなことをすると、インディアンとしてこのクニでは生きて行けなくなるからだ。」と言っていたことをいまさらながら思い出します。

しかし儀式が終わった後とはいえ、その祈りの中心の場所、その中心に立つこの宇宙全ての生命を象徴する聖なる木(今年のその木は特にビッグマウンテンの長老を彷彿させた)を伐り倒し、母なる地球の子宮を表すスウェットロッヂを破壊し、そしてこの大地の聖性、四方向がその木を中心にサークルの中交わるメディスンホィール(聖なる輪)を表すサンダンスグラウンドを跡かたもなく破壊した、そのことの意味は僕自身サンダンスの道(SUNDANCE WAY OF LIFE)を学ぶ者として極めて重大でありショッキングな出来事です。ビッグマウンテンのディネにとっても、本来伝統的な儀式ではないサンダンスがこの地で行われるようになりもう18年がたち、そのなかで育った若い世代も少なからずいるのです。サンダンスは、4年を一周期としているため4年毎そのサイクルの終わりに翌年からもう4年行うかどうか話し合われ決められます。だから、その4年毎のサイクルが4回以上繰り返されて来たことは、ここビッグマウンテンにとってこのサンダンスの持つ儀式の力、その意味するものが、ここの人々に受け入れられて来た証でもあります。SDNサンダンスの方ではチーフ・クロウドッグが来なかったことにより、今年はじめて4日間地元ディネのサンダンスチーフ、ノーマンのコンダクトする儀式となったばかりです。

いまではここアリゾナだけではなく、オレゴン、カリフォルニア、テキサス、ニューヨーク、カナダ…一時はメキシコでもサンダンスは行われています。かつてのラコタ(スー)、シャイアン、クロウなど、平原部族の伝統儀式であるサンダンスがいろいろな部族に受け入れられて広がっているのです。4年後の2005年にはサウスダコタ州にあるラコタの聖地ブラックヒルズで4カラーサンダンスも行われる予定です。ここアナ・メイサンダンスのチーフ、ジョー・チェイシングホースがコンダクトする四つの色(黒、赤、黄、白)の人々が同じ輪の中で踊り祈る、メディスンホィールの教え、グレートスピリットの願いが具現するサンダンスです。

この起きた一連の悲惨な出来事は、その基はもちろんビッグマウンテンに持ち込まれた様々な問題が引き起こした一つの大きな出来事に違いないし、それはいまやホピ・ナバホという2つの隣り合って暮らして来た、どちらもアメリカ先住民と呼ばれるが、文化の異なった民族にもたらされた一つの大きな不幸的な出来事ではあるのだけれど、そこでいま起きていることは、決して民族間内のみで生じた問題では決してなく、そこに介入してきた、この亀の島を侵略支配してつくられた国家とその国を支える産業、そしてそのシステムに組み込まれた(ざるを得なかった)両部族政府、そしてその新しい生き方を追従する多くの人々によって持たらされた出来事であるとはっきり断言出来ます。

ナバホ、ホピ、ラコタ(スー)…それぞれの部族にはそれぞれの教えと生き方がありますが、そのどちらが秀れていたり正しいということは決してありません。ビッグマウンテンを取り巻くニュースを今後いろいろな場所で目にする機会も増えて来ると思いますが、今、確信を持って言えることは、それぞれの立場を代弁する部族名で発せられる情報の、その部族名に捕われると本当のことは見えてこないということです。いま一度、この時代に外の世界に警告されたホピの予言の語る2つの異なる道を思い返してみたいと思います。片方は頭の無い人が並ぶ、滅びに至るギザギザの大地から遠ざかる道と、もう片方はトウモロコシと創造主と共に大地の上に真直ぐに続いてゆく道。そのどちらの道を歩む者か、どちらの道を選択した者か、そう問いかけながらこれらのこと、もしくはこれから起きてくることを見つめていきたいと思います。

Land and Life〜 大地とそこに住む生命〜 は決して切り離されてはいけないのだ。火や水や木や山と共に自分達の信仰はあり、それは他の街に移住し、日曜日に教会の中で祈れば良い、ということでは決してないのだ、と伝統派の人たちは言います。この起きた一連の出来事によりこのことを巡り闘う裁判が始まります。彼ら先住民にとって憲法で保証された信教の自由を巡る闘いともなるでしょう。祖先が祈りを捧げた山や泉、祖先が眠る場所、生まれた時にこれからはこの大地が母として共に生きてゆくよう、へその緒を埋めたところ、それらすべてと一つとなってはじめて自分たちの信仰が成り立つのだと。彼ら自身はあまり宗教(RELIGION)という言葉は使わずWAY OF LIFE(生きる道、生き方)と言います。いまこの地球上に生きるすべての人の生き方をも問う闘いとなるでしょう。

自ずからの生き方においてもできる限りのサポートをしてゆきたいと思います。夏より新たな署名も集めています。現地より支援カンパのお願いも来ていますので、サポートグッズ、フェアトレード品販売も含めてご協力いただければありがたいです。

引き続き現地の状況が入り次第お知らせします。また多くの心ある人にこのことを知らせて下さい。一人でも多くの人が知り、関心を注ぐことがなによりの力となります。
いつも皆さんの祈りに感謝します。

WALK IN BEAUTY
ALL MY RELATIONS

山口晴康(記)


追記
このレポートの最中にあのテロ事件が起こりました。
その時、生命すべてを象徴する二又のサンダンスツリーの破壊と、現代文明の象徴のような
ツインタワービルの崩壊が頭のなかで重なりました。
すべてはつながっているのだと思います。
すべてのいのちがいのりでつながりあえますように。

 

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山口晴康
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